TMリンクの「LEDビジネス」について

社長ブログ

今回のブログは、TMリンクの「LEDビジネス」についてお話しさせて頂きます。

何故、半導体屋がLED照明関係のビジネスを始めたか?…まずそこから紐解きます。
それは遡ること約10年前、長引く不況に追い打ちをかけるが如く、ご存じのリーマンショックが発生しました。TMリンクは当時、私が社長を兼任していた半導体設計会社のロジックリサーチも含め、いよいよ日本での半導体カスタムLSIの商談が先細り、それどころか進んでいた開発案件もお客さんの都合で中止するものまで出てきました。世の中では半導体ベンチャーがバタバタと倒産、休眠、買収が盛んに起こり、さてさていったいTMリンクはこれからどうやって存続させるか…思い悩みました。

我々の技術を活かして新しいビジネスができないか?…それを模索している中でLED照明器具をリサーチしたところ、これには”特殊な電源”が必ず必要であることに気がつきました。”特殊な電源”とは通常のPC等に付いているAC/DCアダプターではダメ(LEDが劣化する)で、AC100Vから15Vの様なDC電圧を固定で出すのではなく、LEDが求める電流値(例えば0.3A)を安定して流すことが必要でした。
 ※資料:「LED照明器具向け高信頼電源の供給」参照
しかも照明器具は多くの種類、千差万別の形、Power、光等が存在し、各々にマッチした電源をカスタム化して照明器具に作り込むことが必要でした。

(図をクリックすると拡大表示できます。)

TMリンクのエンジニアは基本的にアナログ半導体が専門で、正に電源や高精度アンプ等の中核を担う半導体LSIを設計していましたのでこれは間違い無くフィットすると読みました。更には当時の名だたる照明器具メーカーさんはこの様な電源を設計するエンジニアも製造ラインも持ち合わせてない(それまで必要で無い)ことも自明でしたので、カスタムLSIビジネスの如く ”「電源モジュール」をTMリンクで設計し中国で生産(LSIも上海のSMICで生産していた)して、お客に納入するビジネスモデル” がカスタムLSI(ASIC)にも似て最適解であると判断しました。

折しも当時は80円台/$の超円高状態で日本の製造ラインは疲弊していました。
2009年あたりから閑古鳥の鳴いている半導体ビジネスを一旦お蔵入りさせて、 ”LED電源ビジネスを皮切りに、照明器具全体をターンキーで請け負うビジネスやコンサルティングビジネスに発展させる” ことにより経営危機を乗り越えることができました。

その後、私の富士通の先輩でアナログLSI事業部長だった土屋主税氏(現TMリンク執行役員CTO)を筆頭に、アナログ設計部門に在籍していた工藤氏、瀬川氏がTMリンクにJoinして頂き、さらにアカデミックな案件には元富士通の化合物半導体オーソリティのドクター後藤氏(現TMリンク最高技術顧問)も合流して頂き、一気に ”アナログ技術を生業とするファブレスエンジニアリングカンパニー” を標榜する方向となりました。

2011年3月の震災による経済的な落ち込みはご存じの通りですが、原発問題が勃発し日本はクリーンエネルギーが優先課題とする風潮がLEDビジネスの追い風となり、我々も”大手照明メーカーに数十万台のLED蛍光灯電源を納入”するなど波に乗ることができました。

実は当時、パートナーの半導体設計会社が一緒に組んでLED電源に使うLSIを開発し半導体メーカーとしてビジネスを立ち上げないかというOfferがありました。我々のもっとも得意とする技術分野であり魅力をとても感じました。しかし、よく考えるとこのLSIは当時30-50円/個ぐらい、その内に中国のメーカーが出てくれば10円ぐらいになるだろうという読みをしましてあえて乗りませんでした。それよりLSIは買って来て電源モジュールを作った方が、単価が数百円~数千円でうま味があると感じました。モジュールの構成部品はコンデンサーやコイルなどレガシーのものの集合で、これは値段は大きく下がりません(むしろ昨今では上がっています)。予測どおり、LED用のLSIは今では10円以下で、このパートナーの会社はその後、業務を畳んでしましました。ここでも大きな岐路は、半導体屋があえて半導体をやらなかったことであり、それが今までサバイブできた大きな一因です。半導体屋の悲しい運命でもありますが…

しかしながら…(栄枯盛衰、諸行無常の…で)2014年あたりになると大手メーカーも自前のラインを構築し価格競争に突入、中国廉価商品が勃興し、長寿命のLEDは買い換え需要が無く…更に為替が一気に円安にも進み、TMリンクのLED関連ビジネスも再度、見直す段階に来ました。それまでの単純な照明器具(電球や蛍光灯等)向けのプロダクトは既にパワーゲーム(薄利多売)の様相が色濃く、転換期に直面しているのも事実でした。

元富士通の優秀なエンジアリング力を我々の差別化に使うには、 ”高付加価値のLED関連商品を中核にするビジネスモデルが最適”であると判断し、ニッチで時間がかかっても何とか頑張れるビジネスを掘り起こしました。

運良く、日経流通新聞にTMリンクの記事(日経流通新聞の記事はこちら)が取り上げられたこともあり、LED可視光通信、植物育成ネットワークLED、ZigBee連携蛍光灯、医療向け等をお客様から開発/製造委託を受けることができました。
 ※資料: LED照明「次世代照明ー高付加価値ビジネスへの移行」 参照

LED植物育成インテリジェントシステム

また多くのお客様がいろいろな商品展開をするのにあたり、自社にリソースが無いケースが多々あり(長い不況でリストラする企業も多く)、TMリンクがコンサルタントとしてお手伝いするビジネスも大きく伸びました。
 ※資料:「コンサルティングとTMリンクの貢献」参照

更には世の中、IoT,IoT・・・と叫ばれるようになり、我々もここで自前のIoT商品を開発しようと決断し、LED蛍光灯に「オートフォーカス5MCMOSカメラ」と「WiFiソリューション」を組み込み、工事レスで5Mクラスの動画や静止画がPCやサーバーで受け取れる画期的なシステムをリリースしました。
 ※資料:「オートフォーカス小型カメラ内蔵直管LED照明システム」参照

(図をクリックすると拡大表示できます。)

また一時、お蔵入りしていた半導体ビジネスも2015年あたりからIoTと中国半導体工場建設ラッシュでTMリンクも中国半導体ビジネスを開始できました。これについてはまたブログで紹介させて頂きます。